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2015年09月16日

急速落下する

 もはや言葉にならない。この明らかに失敗したハイリスクハイリターンのリスクの部分をさらに天秤にかけ、現状はどっちのリスクを取るかの段階まで達している。
 飛ぶか、埋まるか。飛べばそのまま夜空の一部になり、埋まれば大地の一部となってこの世を見守る地母神に……なるか! どっちに転んでも骸だよ!


 地竜の抵抗も虚しく、大魔女様の掛け声とSIAX 瘦面共に僕ら一行は、文字通り”空を駆けた”

……気分は案外悪くない。重力から解放され、この体いっぱいに広がる浮遊感は、まるで翼を生やした天使の気分だ。このまま風が吹けば、どこまでも羽ばたけそうな、そんな大らかな気分……
 だが残念。所詮人間は翼を持つ事なぞできず、一時的に空を飛べた所でそれは所詮一時甘い”夢”なのだ。
――――願わくばこの時が永遠に続いてほしい。しかしこの世に永遠なぞない。

 形あるものはいつか終焉を迎える。それはこの世界でも例外ではなく、0時に魔法が解けるシンデレラのように、ロケット花火がただのゴミへと変わるように、この心地のいい”夢”から覚める時は、いつか必ずやってくるのだ。

――――あの紐なしバンジー決死の大ジャンプから、数時間が過ぎた。
 辛くも雪崩の魔の手から逃れた僕らは、今度は重力と言う手に捕えられ、さすがにそれには逃れられる事はできず引き寄せられるがままに落ちて行った。
 その狙い通り、雪が積もる山の高層部から中腹までの道のりを、見事狗糧牌子一気にショートカットする事に成功させた大魔女様であったが、その反動はすざましく、乗員は全員もれなく衝撃と言うダメージを負うハメになり、さらには下山よりも手当が最優先されるというまさに慢心総意の状況に陥っていたため、惜しくも下山には至らず仕舞いで終わった。

 ――――日はついに地平線に接触し、あれだけ蒼かった空が燃えるように赤く染まっていく。
 残念だったな。イイ線行ってたが、もう完全に”タイムリミット”だ。

「こ~ら~! 何やってんの! 今日中に山を下りるって言ったでしょ~~!」

 なんでこいつ一人だけピンピンしてるのだろう。あの高さから垂直落下で落ちて行ったのに。
 以下に地竜越しとは言えその衝撃はかなりの物だったはずだ。この体力仕事を生業としている山賊ですら、打撲や打ち身で苦しんでいるのに。
 それは僕だって例外じゃない。あの落下中の短い時間で、ジェットコースターが時のような三半規管が宙に浮く感覚にやられ、今の今まで気を失っていたのだ。
 絶叫マシンすらダメな僕にあんな紐なしバンジー、または安全装大學 聯 招 放榜 日期なしのフリーフォールをかまされた日には、耐えろと言うのが無理な話なのである。

『も、もう無理でさ~』

「だらしないわよあんたら、それでも山賊!?」

「お~き~な~さ~い~!」

 無茶言うな。仮に彼らが無事だったとしてももう遅い。日の光が照らす猶予はどう見ても残りあと僅かだ。
 夜の山道をうろつくのは危険だと言う事は素人の僕ですらわかるぞ。潔く諦めろ。

「はぁ……くそ、一泊確定かぁ~」

 いいだろ別に。ここの風景はお前の家と似ているのだから。
――――そう、ここはアルフォンヌ山脈”帝都側”下腹部。  


Posted by 清風伴明月 at 12:24Comments(0)